2011年11月8日火曜日

フランスの療育

1ヶ月半検診のときに「パパ、ママ」も言えなかった息子は、フランスのPMI(日本の保健所みたいなところ)にいる小児科の先生(IMF専務理事のラガルド女史似の先生)に、「言葉が遅い!」と怪訝な顔をされた。しかもまだその頃息子は伝い歩きがやっとで、ちゃんと歩くこともできなかったため、先生は「この子おかしい。発達に問題あり。」と断言。

検診のときにいっしょに来てくれた夫は、この先生の態度にかなり不満で、セカンド・オピニオンを求めようと別の小児科の先生に会いにいった。予防接種のついでにセカンド・オピニオンを聞こうとしたのだけど、今度の先生(赤い蝶ネクタイをしたおじいちゃん先生)は注射に大泣きしたうちの子を早く追い払いたいように、「別に今歩かなくったって問題ないよ〜、言葉もそのうち話すよ〜」と一言で診断され終了。

いったい、どっちの先生を信頼したらいいのか。結局最初に会ったラガルド女史似の先生の厳しい言葉が強烈だったので、その先生に「発達が遅いというなら、どうすればいいの?発達を見てくれる先生を紹介してくれ」とお願いし、児童精神科の先生(pedopyschiatre)を紹介してもらった。日本だと一歳半検診でひっかかる子供は「療育センター」というところで、詳しい検査を受けたり、歩く練習をしたりすると聞いたので、児童精神科の先生って何?と思ったのだけど、これがこの国のシステムならしょうがない。先生に会うことになった。初回の面接のときに、その先生とペアでpsychomotoricianという日本で言う療育師さん(?)のような先生が毎週息子の動きを見て、その先生からの報告をうけて最終的に児童精神科の先生が診断します、と説明される。

じゃぁ、はりきってpsychomotoricianの先生とお会いしてみようということになり、会ってみたら、若くてかわいらしい女の先生だった。大きな黒い瞳に黒い髪、ボーイッシュな髪型が似合って、ananの表紙になってもおかしくないような妖精のような先生。この先生の部屋にはたくさんおもちゃや遊具があって、息子も行くと大喜び。しかもこの先生も一緒になって息子と遊んでくれるので、毎回セッションの時間は息子も楽しみにしている様子。でも…。日本の「療育センター」だと歩けない子がみんなで一緒にグループで遊んだりすると聞いていた私は、これでいいのか?と疑問符。基本的には毎回おもちゃや遊具を使って先生と息子は一対一で遊ぶ。(たまに私も遊びに合流)。まったく歩く練習とか、「ほら、ちょっと立って歩いてみようか〜」と先生が息子を促すことも全くない。

そこで、3度目の面接のときぐらいのときに、おそるおそる先生に聞いてみた。
すると先生は、
「心配しなくても大丈夫。絶対そのうち歩くから。今(当時うちの息子は1歳7ヶ月)ここで、無理に歩かせようとすると骨に負担が掛かったりするから、この子が歩く気になるまで待ちましょう。この子は外の世界と接するときの恐怖が普通の子に比べてちょっと強いみたいね。だから、こうやってハイハイしながら、テーブルの下をくぐったり、障害物を超えて行ったりすることで自分の体に自信がつくから。その練習を毎回してるのよ」
と言う。

確かに、毎回先生は椅子やトンネル、クッションとかで障害物をつくり、その間をうまく息子がすり抜けていけるような行動をうちの息子に促していた。ただ単に遊んでるわけじゃなかったんだなーとホッとしたけれど、2歳の誕生日を迎えても息子は自分で歩かなかった。

公園に息子を連れては行くものの「外の世界と接するときの恐怖」が少し強い息子は、ただ泣いているだけで終わった日もある。それでもめげずに公園に連れて行ったある日、ふと気がついたことがあった。あるときから必ず息子は遊具の下をハイハイでくぐるようにして遊ぶようになった。(当初私は外の地べたをハイハイさせることに非常に抵抗があったのだけど、psychomotoricianから汚いとか気にすることないですよと言われ、地べたハイハイをOKにした)

そんな日々が1、2週間ぐらい経った後、息子は自分の足で歩き出した。最初は私たち親が見ていないところで、トコトコトコっと歩き出し、「あ、あれ!歩いてる!」と私が叫ぶと、息子はデヘーっと恥ずかしそうに床にひれ伏す。私が「ほら、もう一回歩いてみせてよ〜!」と言っても息子はダハァ〜!と恥ずかしそうに叫び、床にゴロゴロ。で、夫と私が諦めてまた自分たちのことに取り掛かると、トコトコトコっと息子が歩いてきた…!

2歳1ヶ月で歩き出した息子を見たその日、私がうれし泣き状態だったのは言うまでもない。

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